EEE会議(ブッシュ政権の「ウラン疑惑」)...........................................2003/7/16

皆様
 
イラク戦争の事実上の終結から2ヶ月以上が経ちますが、イラクで大量破壊兵器が依然発見されていないため、ブッシュ政権による開戦前の情報操作が政治問題化しつつあるようです。とくに、ブッシュ大統領が今年1月の一般教書演説で、イラクの脅威を強調するあまり、誤った情報に基づいて、イラクのウラン購入計画を指摘したいわゆる「ウラン疑惑」が、政権全体を揺るがしかねない問題となっている模様です。

最新の情報によれば、米上院外交委員会のヘーゲル委員(共和党)は7月14日、この「ウラン疑惑」について、「チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ライス大統領補佐官、パウエル国務長官もかかわっている」と言明。同じ共和党という身内からの批判だけに極めて事態は深刻と受け止められております。

「ウラン疑惑」に関しては、テネット中央情報局(CIA)長官が7月11日、英情報機関からもたらされた「イラクがニジェールから濃縮ウランを購入」との情報が、一般教書に盛り込まれるに至った手続きについては「問題がなかった」としながらも、米大統領の演説に使うには厳密性に欠けていたと、自らの責任を認める発言をしています。

ブッシュ政権としては、テネット長官に責任を押し付けることで「ウラン疑惑」の幕を引きたい考えのようですが、ヘーゲル委員は、チェイニー副大統領ら政権中枢に対する徹底的調査を行うべきだとの考えが、共和党内にもあることを示しております。当然ながら民主党側は、来年の大統領選を念頭に、今後本件を徹底的に追及する構えを見せております。

かつて20年近く前、イラン・イラク戦争の渦中にあったホメイニ・イラン政権に対し、極秘裏に武器を売却、その売却益をコントラ支援に回して政治問題化したレーガン政権時の「イラン・コントラ事件」と同様、今回の「ウラン疑惑」も、早期幕引きの処理を誤ると、ブッシュ政権にとって大打撃となる惧れもあるでしょう。

もちろん、今後あまり遅くない時点で、イラクのフセイン元大統領の殺害・死亡がはっきりするとか、大量破壊兵器(またはその存在を確認する証拠物件)が発見されれば、事態は一気に解決するでしょうが、どうやらフセインの肉声によるテープ放送があったとかで、彼の生存説も出てきており、他方イラク戦後復興も大分もたついており、前途多難のようです。
 
小生が、さる4月ニューヨークでブリックス(Hans Blix)国連イラク査察委員長(6月末で辞任)と会った際本人から直接聞いたように、そもそも「大量破壊兵器が存在しないことを証明するのも難しいが、それが存在したことを証明するのも同様に難しい」ということで、今後ブッシュ政権にとって都合の良い情報や証拠が発見される可能性はどうも乏しいと思われます。
 
さて、イラク問題はともかく、日本にとって一層深刻な北朝鮮の核兵器問題についても、実は同じ問題があります。北は相変わらず「瀬戸際外交」を続けていますが、それは単に米国を2国間交渉に引きづり出すためのブラッフなのか、それとも、本格的な核武装に踏み切ったのか(本当に8,000本の使用済み核燃料棒の再処理を完了したのかどうかを含め)、もし後者ならば、いずれ近いうちに核実験を強行し「核兵器国宣言」をするのかどうか、見方は分かれますが、CIA も確信を持っておらず、真相は依然藪の中というべきでしょう。ここに今日の核兵器問題の難しさがあるわけです。 以上
 
金子熊夫